今回は、児童文学の作品を用いて、
洋書の読解を行いたいと思います。
テキストは、『美女と野獣』です。
今回学べるのは、
・関係代名詞の継続用法
・分詞構文
などです。
文法の学習が一通り終わったら、
ぜひ実践に取り組んでみましょう!
『美女と野獣』冒頭部分
それではまず、物語の冒頭部分を読んでみましょう。
最初に文章を掲載し、
のちほど部分ごとに解説を加えていきます。
少し難しい表現や単語は注に意味を載せていますので、
参考にしてみてください。
There was once a very rich merchant, who had six children, three sons, and three daughters; being a man of sense, he spared no cost for their education, but gave them all kinds of masters.
His daughters were extremely handsome, especially the youngest; when she was little, every body admired her, and called her The little Beauty; so that, as she grew up, she still went by the name of Beauty, which made her sisters very jealous.
The youngest, as she was handsome, was also better than her sisters. The two eldest had a great deal of pride, because they were rich. They gave themselves ridiculous airs, and would not visit other merchants’ daughters, nor keep company with any but persons of quality. They went out every day upon parties of pleasure, balls, plays, concerts, etc. and laughed at their youngest sister, because she spent the greatest part of her time in reading good books.
As it was known that they were to have great fortunes, several eminent merchants made their addresses to them; but the two eldest said they would never marry, unless they could meet with a Duke, or an Earl at least.
Beauty very civilly thanked them that courted her, and told them she was too young yet to marry, but chose to stay with her father a few years longer.
merchant 商人、sense 分別、spare 取っておく、master (個人指導)教師、admire ほめる、go by 〜という名で知られる、a great deal of たくさんの、
少し長めに読んでいただきましたが、
いかがでしょう?
いろいろと工夫が凝らされている文章ですね。
子どもでも読みやすいように平易な表現や言葉が使われていますが、
それでいてかちっとした文です。
精読をすれば、リーディングだけでなく、
ライティングでも使えそうなものを多く学び取れます。
ではまず1行目です。どんな文になっているのでしょう?
There was (V) once a very rich merchant (S), who (S’) had (V’) six children (O’), three sons (O’), and three daughters (O’);
(むかしむかし、あるとても裕福な商人がおり、子どもが6人——息子が3人、娘が3人——いました。)
There was once ~.「むかしむかし〜/かつて〜」は、昔話の書き出しでよく用いられる構文です。
whoは関係代名詞の継続用法なので、
あるとても裕福な商人に関して、
補足説明をしています。
この商人には子どもがいて〜といった具合に、
具体的な情報が付け加えられています。
また、ちょっとわかりにくいのですが、
six children, three sons, and three daughtersのところは、
six children = three sons, ~の同格(同じもの)となっているので、
要注意です。
being a man of sense, he (S) spared (V1) no cost (O) for their education, but gave (V2) them (O) all kinds of masters (O).
(分別のある男だったので、子どもの教育には金に糸目をつけず、あらゆる先生をつけました。)
being a man of senseは、主語がhe(商人)の分詞構文です。
理由「〜ので」ですね。
spareは「使わずに取っておく」という意味ですが、
その後にno costが来ているので、
「費用を惜しまない」という、日本語的な発想では
逆転しているような意味を生み出します。
また、少し離れていますが、
gave (V2)はspared (V1)と同じく、heを主語にしています。
masterには「師匠」など、「その道の一流のひと」という意味がありますが、
ここは教育に関する話なので、
個人指導教師(tutor)に相当するものとして理解できます。
時代や文化を感じられますね。
Little Beauty登場
いよいよ、主人公であるLittle Beautyが登場します。
どのような言葉を用いて描写されているのか、
注目してみましょう。
His daughters were extremely handsome, especially the youngest;
(娘たち、なかでも末の娘は見目麗しく、)
handsomeは「器量のいい」という意味で、
日本語の「ハンサム」とは異なり、
女性にも使われます。
when she was little, every body (S) admired (V1) her (O1), and called (V2) her (O2)The little Beauty (C2);
(幼い頃には誰しもがほめたたえ、美少女と呼びました。)
so that, as she (S’) grew (V’) up, she (S) still went (V) by the name of Beauty, which (S’) made (V’) her sisters (O’) very jealous (C’).
(そうして、大きくなってからも美女と呼ばれていたので、姉たちからは嫉妬されました。)
セミコロンで、まだゆるやかに文が続いています。
(実際には、so that以下がevery body admired~を主節(メインの文)とした従属節(サブ)
ですので、実際とは異なりますが、説明の都合上SとS’などとして表記しています。)
so (that)は「〜なので」という意味で、
結果の内容を導きます。
ここでのasは「〜する時」、go byは「〜という名で通る」です。
「, which」は継続用法で、ここでは直前の文の内容を先行詞としています。
「美女と呼ばれていた」という内容が先行詞ですね。
The youngest, as she was handsome, was also better than her sisters.
器量がよかったということもあり、一番年下の妹は、姉たちよりもひととして優れていました。
ここのasも理由です。
多少わかりにくいですが、このあとでも述べられている通り、
皆から愛されていたので、姉たちとは異なり、
素直に育ってきたということでしょう。
The two eldest had a great deal of pride, because they were rich.
裕福であったために、姉たちはとても気位が高かったのです。
a great deal ofは「たくさんの」という意味です。
They gave themselves ridiculous airs, and would not visit other merchants’ daughters, nor keep company with any but persons of quality.
二人はひとをばかにするような取り澄ました様子で、他の商人の娘たちのところは訪れようともせず、上流のひとたちばかりと付き合っていました。
ridiculousはバカにした、airは複数形にすると気取りという意味になります。
ここではbutに注意が必要です。
butには以外にはという意味もあります。
other thanで言い換えることができます。
ここでは「誰とも付き合わなかった+上流のひとたち以外には」
と理解しておくことが大切です。
They went out every day upon parties of pleasure, balls, plays, concerts, etc. and laughed at their youngest sister, because she spent the greatest part of her time in reading good books.
毎日楽しいパーティーや舞踏会、演劇、演奏会などに出向いては、本を読んでばかりいる妹のことを笑いました。
the greatest[er] part ofは大部分という意味です。
greatには偉大なという意味だけでなく、
たくさんのという意味もあります。
As it was known that they were to have great fortunes, several eminent merchants made their addresses to them; but the two eldest said they would never marry, unless they could meet with a Duke, or an Earl at least.
二人が莫大な財産を相続することはわかっていたので、著名な商人たちは彼女たちに言い寄りましたが、当人たちは公爵か、あるいは少なくとも伯爵でなければ結婚しようとはしませんでした。
Beauty very civilly thanked them that courted her, and told them she was too young yet to marry, but chose to stay with her father a few years longer.
美女は求愛者たちに丁寧に感謝を述べ、まだ結婚をするには若すぎると言って、さらに数年間父親と一緒にいることを選択しました。
お姉さんたちと、Little Beautyは対照的な性格と暮らしぶりを示していますね。
ここから少しずつ物語が動いていきますが、
それは次回以降お話したいと思います。
まとめ
このように、基礎英文法は長文を読む上でとても役に立ちます。
知識をうまく使える精度が高くなればなるほど、
文章の深層まで理解することができます。
表層的な情報の処理で終わることなく、
自分なりに「〜というのは?」などと疑問を付けていくことで、
物語の解像度を格段に上げることができます。
今回の例で言えば、商人や貴族などに表される、
階級社会での人間関係や教養のあり方などが実際的に理解できます。
そのようなものが、社会に生きる個人の人格をどのように形成し、
そしてどのような変化を与えていくのか…、
といったやや小難しいことにも注意を払うことができるようになります(笑)
普段とは違う読み方にもぜひ挑戦してみてください。