長文読解(洋書編『不思議の国のアリス』)

英文法

英語を学習しているひとで、

「いずれ洋書を読めるようになりたい!」

と思うひとは多いと思います。

でも、実際にどうすれば読めるようになるかは、

なかなかイメージしにくいと思います。

そこで今回は、英文法の知識をうまく使いながら、

洋書を読む上でのポイントを解説したいと思います。

そもそも英文読解では、話の現在地とそれが進んでいく方向を知ること

が大切です(参考記事)。

それぞれの文の主語が現在地を示す旗の役割を果たし、

それに応じる動詞が話の方向性を示すコンパスとなります。

この点を頭に置きながら、

実際に洋書を読んでみましょう。

『不思議の国のアリス』冒頭部(1)

以下は『不思議の国のアリス』の冒頭部です。

🇬🇧Alice 🧭was beginning to get very tired of sitting by her sister on the bank, and of having nothing to do: once or twice 🇬🇧she (=Alice) 🧭had peeped into the book 🇬🇧her sister 🧭was reading, but 🇬🇧it (the book) 🧭had no pictures or conversations in it, “and 🇬🇧what 🧭is the use of a book,” 🧭thought 🇬🇧Alice “without pictures or conversations?

まず一文目から見ていきましょう。

Alice (S) was beginning (V) to get (O) very tired of sitting by her sister on the bank, and of having nothing to do . . .

アリスは川辺でお姉さんのとなりに座っていて、何もすることがなかったのであきあきし始めていました

とても長い文ですね(笑)

ですが、このような場合も、

現在地の旗コンパスが見つかれば、たいして難しくはありません。

まず主語はAlice、動詞はwas beginning、目的語はto getです。

したがって、この文は第3文型を作っています。

tired ofは「〜にあきあきする」という意味です。

ここでのポイントは、tired of A . . . and of Bという構造になっているところです。

アリスは川辺でお姉さんの隣に座っていることと、

何もすることがないという、2つのことに飽き飽きしているのです。

次の文を見てみましょう。

once or twice 🇬🇧she (=Alice) (S) 🧭had peeped (V) into the book (that) 🇬🇧her sister (S’) 🧭was reading (‘V)

一、二度、彼女はお姉さんが読んでいる本をのぞいてみました

主語はshe (=Alice)、動詞はhad peeped(peep intoで「のぞきこむ」)です。

これは第1文型ですね。

この後に出てくるthe bookは先行詞となっていて、

thatなど主格の関係代名詞がher sisterの前に省略されている

と考えることができます。

but 🇬🇧it (the book) (S) 🧭had (V) no pictures (O) or conversations (O) in it (=the book),

ですが、さし絵もなければ会話もありませんでした

この文は第3文型ですね。

目的語が2つ並んでいます。

“and 🇬🇧what (S) 🧭is (V) the use of a book (C),” 🧭thought (V) 🇬🇧Alice (S) “without pictures or conversations?

ですので、アリスは「絵もおしゃべりもない本なんて、何の役に立つのかしらと思いました

つづいて、アリスの心の中のつぶやきがつづられています。

疑問詞whatが主語で、補語であるthe use of a bookとイコールになっています。

その後で倒置が起き、thought Aliceの順番になっています。

英語ではよくこのような主語と動詞を入れ替えた倒置が、

「〜と思った」「〜と言った」というところで起きます。

物語には頻出ですね。

さらに深く読むために

『不思議の国のアリス』はイギリスで誕生した児童文学です。

作者ルイス・キャロルは、

イギリスの名門大学オックスフォード大学で学び、

教壇に立っていました。

そのため、ここでの川も、

オックスフォードを流れるテムズ川を連想させます。

写真をご覧ください。

いかがでしょうか。ボートがたくさん並んでいますね。

このように、テムズ川の岸辺は低いところが多く、

特にオックスフォード大学の敷地内ではボートの乗り降りができたりします。

ディズニーのアニメーション映画で描かれている通りですね。

こういう英文の細部に、自分の中の情報が対応するようになると、

読解の解像度は格段に上がります。

また、アリスはお姉さんの読んでいる本がつまらなそうと思っています。

ですので、アリスは挿絵と会話がたくさんある、

児童書を好んで読む年齢だということもわかります。

(脱線しますが、冒頭のwas beginningはアリスが徐々に退屈になってきた、

というその前の出来事を想像させます。

ですが、小説の書き出しなので、読者はその前に何が起こったかはわかりません。

ある意味、作者のユーモアの表れでもあるのでしょう(笑)。

その一方で、だんだんとアリスが退屈になってきたということがわかるので、

読者も物語に没入しやすくなるという効果があります。

この後に何かが起こるのだろう、という期待を抱かせます。

おかしみがあり、かつ物語に入り込みやすいという、

優れた書き出しだと思います。)

不思議の国へ

もう少し続きを読んでみましょう。

So 🇬🇧she 🧭was considering in her own mind (as well as 🇬🇧she 🧭could, for 🇬🇧the hot day 🧭made her feel very sleepy and stupid), whether 🇬🇧the pleasure of making a daisy-chain 🧭would be worth the trouble of getting up and picking the daisies, when suddenly 🇬🇧a White Rabbit with pink eyes 🧭ran close by her.

この文は、かっこの部分があるのでわかりにくいのですが、

she (S) was considering (V) in her own mind . . . whether ~ daisies (O)

彼女…と心の中で考えていました

という第3文型になっています。

挿入句の部分は、

(as well as 🇬🇧she (S) 🧭could (consider) (V), for 🇬🇧the hot day (S) 🧭made her (O) feel (C) very sleepy and stupid),

彼女はできる限り考えてみたのでした。というのも暑い日だったので、眠くて頭がぼうっとしていたからです)

という意味になります。

まず、couldの後には反復を避けるために、

その前に出てきている動詞considerが省略されています。

また、ここでのfor「というのは」という理由を表します(接続詞)。

(*forは前の部分(主節)で述べた内容に関して、

補足的にその理由を述べる時に使われます。)

また、the hot dayの文は第5文型を作っています。

(as well as以下の内容は、

アリス本人を除いては語り手(=作者)しか知り得ないことなので、

書き出しからして、この語り手は面白いひとだと言えそうです。)

whether 🇬🇧the pleasure of making a daisy-chain (S) 🧭would be (V) worth (C) the trouble of getting up and picking the daisies,

(わざわざ立ち上がってヒナギクを摘んで、花輪を作るのは楽しいかしら)

ここのwhether「〜かどうか(ということ)」は、

名詞節を作るので、daisiesのところまでが、

consideringの長い目的語です。

the pleasureはヒナギクの花輪を作る喜びで、

それが立ち上がって摘み取る面倒に値するか、

とアリスは考えているのです。

とても老成した考えですね(笑)

また、the trouble of getting / pickingの構造しっかり見えているといいと思います。

少し発展的な内容になりますが…、

whether以下はアリスの言葉遣いを用いています。

ですので、書き出しの部分だけでも、

語り手の言葉と、アリスの言葉が入り混じっていることがわかります。

読解力が高まっていくと、

このような言葉のグラデーションにも瞬時に気づけるようになります。

(そのため、翻訳では、

「わざわざ立ち上がってヒナギクを摘んで、花輪を作るのは楽しいかしら

と会話調で訳されています。)

最後の部分を見てみましょう。

when suddenly 🇬🇧a White Rabbit with pink eyes (S) 🧭ran (V) close (C) by her.

とつぜん、赤い眼をした白ウサギそばを走っていきました

ここで白ウサギが登場します。

この文はSVCの第1文型を作っています。

ということで、実はメインとなる文(主節)は、

she was ~ the daisiesまでで、

それに従うサブの文(従属節)は、

when ~ by herまでとなります。

途中挿入句もあり、

なかなか名詞と動詞のかたまりを見分けるのは大変なのですが、

英文法の知識をうまく使えば、

長文も正確に読めるようになります。

まとめ

今回のポイントを以下の通りにまとめてみます。

  1. tired of A … and of Bのように距離のあるつながりを意識する
  2. 関係代名詞や動詞の省略が起こっていても、復元できるようにする
  3. テムズ川など、舞台設定に関する背景知識も少しずつ手に入れる
  4. 倒置があっても正しく意味を理解する
  5. 言葉遣いから生まれるおかしみや工夫を理解するために、レトリック(修辞)にも少しずつ慣れていく
  6. 物語では、誰の言葉なのかをつねに意識する

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